なんて、昔は言われていましたが近年は装置の性能が良くなってきているので消化管は評価すべき臓器となっています。
特に急性虫垂炎などは非常に超音波検査が有用です。
病期の診断もできます。
そんな有用な超音波検査ですが、消化管となると途端に苦手意識が芽生えてくる方が後を絶ちません。
ぼくもそんな中の1人でした。
なぜ苦手意識が芽生えるのか?
100人虫垂の検査をしたと仮定します。
きちんと虫垂が描出できている人はわかると思いますが、
あっち向いたりこっち向いたりしています。
これは虫垂が固定されていないためです。
虫垂の走行があっちこっちしていることが虫垂の描出に苦手意識を持たせている原因となります。
しかし、解剖をおさえていけば描出率はぐっとあがってきます。
消化管というものは一見するとガスだらけで何を見ているのか、
何も考えずにプローベを握っていると、ただガスを眺めているだけです。
このことも苦手意識を持たせる原因の一つとなります。
虫垂の解剖
虫垂描出に当たって押さえておくべき解剖は以下の3つです。
- 上行結腸
- 回盲部
- 盲腸(虫垂口の同定)
です。
上行結腸
簡単にいうと体の右側にある大腸です。
足側から頭側に走行していて、一番外側に位置しています。
小腸はグニャグニャと蛇行しながら走行しているのに対して、結腸の走行は直線的です。超音波でみると厚いガスを含有していて、ハウストラが観察されます。
つまり、一番外側を走行する直線に走行する厚いガスを探すことが第一の目標になります。
回盲部
上行結腸を同定して足側に上行結腸のガスを追跡していくと、左側から細長い管腔が合流してきます。
これは終末回腸が結腸に合流したところです。
合流したところを観察するとバウヒン弁というものが観察されます。
この終末回腸が合流したところを回盲部と言います。
超音波検査で虫垂を描出し始めると、終末回腸を虫垂と勘違いしてしまう人がいます。
誤診を防ぐためにも確実に回盲部の同定は行ってください。
盲腸
回盲部を同定して、更に足側に結腸のガスを追跡していくと途中でガスが無くなります。
ここの部位が盲腸ということになります。
虫垂は盲腸から連続する細長い管腔です。
盲腸が同定できたら、盲腸から連続する細長い管腔を探していきます。
プローベの選択
盲腸まで同定できたら高周波プローベにプローベの持ち替えを行いましょう。
虫垂炎で腫れていれば虫垂は6mm、7mm、8mm・・・ひどければ15mm、16mmと大きくなるので見つけやすいですが、正常な虫垂は2-3mm程度の時もあります。
2-3mm程度の虫垂をコンベックスプローベで探すのはナンセンスです。
では、最初から高周波プローベで探せばいいじゃないかと疑問に思う方もいるでしょう。
高周波プローベは狭い範囲を詳細に観察することには向いていますが、広い範囲の観察には不向きです。
広い範囲の観察にはコンベックスの方が向いていますのでそちらを使用します。もしも、ほかの病気が隠れていた場合、高周波だけの観察では見逃してしまう可能性があります。
臨床から虫垂炎の有無を問われれば、虫垂の観察はもちろん必須ですがそれ以外に腹痛の原因となる所見が隠されていないか広い範囲の観察も行い所見があれば拾い上げましょう。
虫垂と終末回腸の見分け方
虫垂と終末回腸の違い。
一言で言えば、『終わりがあるか、ないか』です。
どういうことかと言うと、虫垂の先端はどこにも繋がりません。先端で虫垂が描出できなくなって終わります。
一方で終末回腸は、いつまでも終わりが来ません。
必ずどこかにつながります。もう一つあります。
虫垂かな?と思われる管腔を探し当てた場合、プローベを90度まわしてみてください。
回腸に比較して、正円形に描出されます。回腸は楕円です。
まとめ
虫垂は腫れていれば大きくなるので、比較的探しやすくなります。
しかし、腫れていなかった場合はせいぜい2-3mmです。
そんな小さなものを探すわけですから慣れないうちは難易度が高く感じると思います。
虫垂描出のポイントは解剖です。
超音波学的解剖を完璧にしていきましょう。また、終末回腸と虫垂を間違わないように短軸での観察も忘れずに行いましょう。
日常の鍛錬は欠かせませんので時間があれば虫垂描出の練習をしていきましょう。